「懲戒処分」の種類と、成立に必要な条件

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「懲戒処分」の意味

懲戒処分(ちょうかいしょぶん)

職場の秩序を乱した行為に対して、会社が制裁として行う措置。

懲戒処分とは、職場の秩序を乱す行為があったときに、会社が制裁として行う措置です。

通常の業務命令や人事異動とは性格が異なります。制裁である以上、相応の根拠と手続きが求められるという点が前提になります。

まず重要なのが、就業規則との関係です。懲戒を行うには、どんな行為が対象で、どんな処分があるのかが規則に定められている必要があるとされています。

規則に書かれていない理由で処分することは、原則としてできません。あとから理由を作って当てはめることも認められにくいとされています。

この構造を知っておくと、処分を受ける側も、行う側も、判断の基準が持てます。

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種類と重さの順序

名称や区分は会社によって異なりますが、一般に次のような段階が設けられています。

📐 よく見られる処分の段階

けん責・戒告

注意を与え、始末書の提出を求めるなど。もっとも軽い区分。

減給・出勤停止

賃金を減らす、一定期間の就労を禁じるなど。

諭旨解雇・懲戒解雇

雇用を終わらせる処分。もっとも重い。

減給については、法律上の限度が定められているとされています。一回の額や、一賃金支払期における総額に上限があるという内容です。

出勤停止は、その期間の賃金が支払われないのが通例です。実質的な負担は小さくありません。

もっとも重いのが懲戒解雇です。退職金の全部または一部が支払われないと定められている場合があり、その後の再就職にも影響しうる処分になります。

諭旨解雇は、本人に退職を勧めたうえで退職届の提出を求める形が取られることが多く、懲戒解雇よりやや軽い扱いとされます。

いずれにせよ、行為の重さと処分の重さが釣り合っている必要があるとされています。軽微な行為に重い処分を科すことは、権利の濫用として無効とされる場合があります。

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成立に必要な条件

処分が有効と認められるには、複数の条件が要るとされています。

第一に、就業規則に定めがあり、その規則が周知されていること。書かれていない、あるいは誰も見られない状態では、根拠になりません。

第二に、行為と処分の均衡です。前述のとおり、重さが釣り合っていなければ濫用と判断されうるとされています。

第三に、同じような行為に対して同じような処分がなされていることです。ある人には注意で済ませ、別の人を解雇するといった扱いは問題になります。

第四に、手続きです。弁明の機会を与えることが求められる場合があるとされています。就業規則に手続きが定められていれば、それに従う必要があります。

第五に、同じ行為について重ねて処分しないことです。一度処分した件で、あとから追加の処分を科すことは認められにくいとされています。

これらは個別性が高い論点です。実際に処分を受けた、あるいは検討している場合は、専門家や窓口に相談してください。制度の運用は会社ごとに異なります。個別の判断が必要な場面では、勤務先の担当部署か、所轄の労働基準監督署などの窓口で確認してください。

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処分に至る前の段階

実際には、いきなり重い処分が下されることは多くありません。段階を踏むのが通例です。

最初は口頭での注意や指導です。これは制裁ではないので、懲戒の手続きは要しません。記録も残らないことがあります。

次に、書面での注意に進みます。この段階から記録が残り始めます。同じ内容の注意が繰り返されている事実が、後の処分の材料になります。

そして懲戒に至ります。会社側から見れば、指導を尽くしたという経過が必要とされるためです。

受ける側から見ると、書面での注意を受けた時点が分岐点になります。ここで認識のずれを解消しておかないと、事実関係が固まってしまいます。

認識が違う場合は、その場で言うか、書面で残してください。黙って受け取ると、内容を認めたと扱われる場合があります。

なお、人事考課での低い評価は、それ自体は懲戒ではありません。ただし処分の前提となる事実の一部として扱われることがあります。

実務での使い方と例文

処分の根拠を確認するとき

感情的にならず、条文と事実関係を尋ねます。

例文:
「処分の内容について確認させてください。就業規則のどの条項に該当するとご判断されたか、また該当すると判断された具体的な事実をご教示いただけますでしょうか」

弁明の機会を求めるとき

手続きとして求めることは正当です。

例文:
「処分を決定される前に、こちらの認識をお伝えする機会をいただけますでしょうか。事実関係について異なる理解をしている部分がございます」

処分する側として通知するとき

根拠と事実を明記し、記録に残る形にします。

例文:
「◯月◯日の件について、就業規則第◯条に基づき、けん責の処分といたします。対象となる事実は次のとおりです。今後の改善に向けて、あらためて面談の場を設けます」

💡 懲戒処分で押さえておく点

  • 就業規則に定めがあり、周知されていることが根拠として必要とされる。
  • 書かれていない理由での処分は、原則としてできない。
  • 行為の重さと処分の重さが釣り合っていなければ、濫用とされる場合がある。
  • 同じような行為には同じような処分を、という一貫性が問われる。
  • 弁明の機会を与えることが求められる場合がある。手続きも要件のうち。

個別性の高い領域です。実際の場面では専門家や窓口に相談してください。

退職を勧められた場合との違い

懲戒と混同されやすいのが、退職を勧められる場面です。性格がまったく違います。

退職勧奨は、会社が退職を勧める行為であって処分ではありません。したがって、応じるかどうかは本人が選べるという点が決定的に違います。

ところが実務では、懲戒の可能性をちらつかせながら退職を勧める形が取られることがあります。「このままだと懲戒解雇になる」と言われる状況です。

この場合、まず確認すべきは根拠です。どの条項に該当するのか、どんな事実に基づくのか。説明できないなら、処分の要件を満たしていない可能性があるということになります。

そして、その場で退職届を書かないことです。いったん提出すると、自己都合による退職として扱われ、失業保険の給付制限にも影響します。

持ち帰って、記録を整理し、必要なら専門家に相談する。時間を置くことで不利になる場面は多くありません。

逆に、処分する側にとっても、手続きを飛ばすことは危険です。あとから無効と判断されれば、その間の賃金の扱いを含めて問題が大きくなります。

似た言葉との違い

  • 普通解雇 — 能力や適性を理由とする解雇。制裁である懲戒解雇とは性格が異なります。
  • 退職勧奨 — 退職を勧める行為。処分ではないため、応じるかどうかは本人が選べます。
  • 降格 — 人事上の措置として行う場合と、懲戒として行う場合があります。根拠が異なります。
  • 指導・注意 — 業務上の働きかけ。制裁ではないため、懲戒の手続きは要しません。

処分を受けたあとに残るもの

処分そのものより、その後の扱いのほうが長く影響することがあります。

まず、人事記録に残ります。昇進や配置の判断材料として参照される場合があり、同じ会社にいる限り影響が続く可能性があります。

次に、退職金への影響です。懲戒解雇の場合、全部または一部を支払わないと規定されていることがあります。

そして転職時です。リファレンスチェックが行われる場合、前職での経緯が伝わることがあります。ただし、伝える範囲には本人の同意が関わります。

履歴書に書く義務があるかどうかは、処分の種類によって考え方が分かれます。解雇に至った場合、退職理由の記載をめぐって判断が要ります。

一方で、軽い処分が転職を決定的に妨げるわけではありません。経緯を自分の言葉で説明できるかどうかのほうが大きいという現実があります。

いずれにせよ、処分を受けた段階で記録を整理しておいてください。時間が経つほど、経緯を正確に説明することが難しくなります。

処分する側の視点も、あわせて書いておきます。

管理職の立場で懲戒を検討する場面では、まず自分の判断だけで進めないことが基本になります。人事部門や、必要に応じて外部の専門家を交えて進める形が通例です。

理由は二つあります。ひとつは、要件を満たしているかの判断が専門的であること。もうひとつは、同種の行為に対する過去の扱いとの一貫性を、個人では把握しきれないことです。

また、対象者との面談を行う際には、記録を残す形にしてください。誰が同席し、何を尋ね、どう答えたか。後から争いになった場合、この記録が唯一の根拠になります。

処分は、下すことよりも、その後に職場が機能し続けることのほうが難しい局面です。手続きを丁寧に踏むことは、その先の運営にも効いてきます。

最後に、処分の公表について触れておきます。

社内で事案を共有する場合、氏名を伏せるのが通例です。再発防止のために事実と処分の内容を知らせる目的であれば、個人を特定する必要はないためです。

氏名を明らかにして公表する形は、名誉に関わる問題を生む可能性があるとされています。必要性と方法について、慎重な判断が求められる領域です。

受ける側から見ても、この点は確認する価値があります。処分そのものは受け入れるとしても、公表の範囲は別の論点として扱えます。

参考にした公的情報

この記事は、次の公的機関が公表している資料をもとに制度の枠組みを整理しています。制度の内容や金額は改正されることがあるため、実際に判断が必要な場面では、リンク先の最新の情報か、担当の窓口で確認してください。

まとめ

懲戒処分とは、職場の秩序を乱す行為に対して、会社が制裁として行う措置です。制裁である以上、相応の根拠と手続きが求められます。

根拠になるのは就業規則です。どんな行為が対象で、どんな処分があるのかが定められ、かつ周知されている必要があるとされています。

段階は、けん責・戒告、減給・出勤停止、諭旨解雇・懲戒解雇といった順に重くなります。減給には法律上の限度が定められているとされています。

成立には、規則の定めと周知、行為と処分の均衡、同種の行為への一貫性、手続き、二重処分の禁止といった条件が要るとされています。

📋 この記事の要点

  • 懲戒処分は、職場の秩序を乱す行為に対する制裁としての措置
  • 就業規則に定めがあり、周知されていることが根拠として必要
  • 規則に書かれていない理由での処分は、原則としてできない
  • 行為と処分の重さが釣り合わなければ、濫用とされる場合がある
  • 弁明の機会など、手続きも成立の要件に含まれる

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