「退職金」は必ずもらえるのか、仕組みと確認先

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「退職金」の意味

退職金(たいしょくきん)

退職に際して勤務先から支払われる金銭。制度の有無は企業による。

退職金とは、退職に際して勤務先から支払われる金銭のことです。退職手当、退職慰労金といった呼び方をする企業もあります。

最初に押さえておきたいのが、退職金は法律で義務づけられた制度ではないという点です。支払うかどうか、いくら支払うかは、それぞれの企業が決めています。

つまり、制度を設けていない企業も存在します。そして制度がないこと自体は、違法でも異例でもありません。近年は設けない企業も増えているとされます。

ただし、就業規則や退職金規程で制度を定めている場合は、その定めに従って支払う義務が生じると解されています。あるかないかは会社次第だが、あると決めた以上は規程どおりという構造です。

だから確認すべきは相場ではなく、自社の規程です。世間の平均額を調べても、自分がいくら受け取れるかは分かりません。

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どういう仕組みで決まるのか

算定の方式は企業ごとに設計されますが、人事労務の実務では次のような形がよく知られています。

📐 よく使われる算定の考え方

基本給連動型

退職時の基本給に、勤続年数と事由ごとの係数を掛ける。

ポイント制

等級や職務に応じて毎年ポイントを付与し、累計に単価を掛ける。

外部積立型

中小企業退職金共済や企業年金など、社外に積み立てる仕組み。

基本給連動型は、長く勤めるほど、そして退職時の基本給が高いほど有利になります。一社に長くいることを前提にした設計です。

ポイント制は、在籍年数よりどの等級でどれだけの期間を過ごしたかが効きます。昇格が早い人ほど積み上がる仕組みで、年功色を薄める意図があります。この考え方は昇進と昇格の仕組みと連動しています。

外部積立型は、会社の外に資金を積む形です。企業型の確定拠出年金を採用している場合、転職時に持ち運べる仕組みが用意されていることがあります。

もうひとつ実務で効くのが、支給の条件です。多くの規程には、勤続何年以上で支給する、という下限が置かれています。三年未満は対象外といった定めは珍しくありません。

この下限を知らずに辞めると、あと数か月で条件を満たしたのに、ということが起こります。退職日を決める前に、規程の支給要件を必ず読む価値があるのはこのためです。

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自己都合と会社都合で変わる

多くの企業の規程では、辞める事由によって係数が変わります。会社都合のほうが高く設定されているのが一般的です。

この区分は失業給付の扱いとも連動する話ですが、退職金の区分と、ハローワークが判断する離職理由は別の手続きです。会社の規程での扱いと、給付の扱いが必ず一致するとは限りません。

離職理由そのものについては自己都合退職の記事で扱いました。判断するのは会社ではなくハローワークだという点が要点です。

希望退職の募集に応じた場合は、通常の退職金に上乗せが示されるのが一般的です。この上乗せ分がいくらで、いつ支払われるのかは、応募を判断する材料になります。

なお、懲戒解雇など特定の事由では減額や不支給を定める規程もあります。この扱いが有効かどうかは事案によって判断が分かれるため、争いになりそうなときは個別の事案は労働基準監督署の総合労働相談コーナーや、弁護士・社会保険労務士に相談してください。

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転職を考えるときに確認すること

辞める側として見るべきは三点です。まず、自社の規程で支給の要件を満たしているか。次に、勤続年数の区切りが近くないか。そして、確定拠出年金の持ち運びが必要かどうか。

区切りについては、規程によっては勤続年数が一年増えるだけで係数が変わることがあります。数か月ずらすだけで差が出るなら、退職日の設計に組み込む価値があります。

受け入れる側、つまり転職先については、退職金制度の有無を確認しておきます。制度がない代わりに月々の給与が高い設計の企業もあり、総額で比べないと判断を誤ります

企業型の確定拠出年金を採用している会社を辞める場合、資産の移換手続きが必要になります。手続きには期限があるとされるため、退職時にまとめて確認しておくと放置を避けられます。

税の扱いについては、勤続年数によって計算が変わる仕組みがあります。金額が大きいだけに影響も大きいため、具体的な見通しは会社の担当部署か税務の専門家に確認してください。

実務での使い方と例文

制度の有無と要件を確認するとき

在職中に聞いておくのが確実です。辞めると決めてから聞くと、意図を勘ぐられることがあります。

例文:
「退職金制度について教えてください。就業規則のどこに規程がございますでしょうか。支給の要件となる勤続年数と、算定の考え方を確認しておきたく存じます」

退職日を相談するとき

区切りが近い場合、数週間の調整で条件が変わることがあります。理由を添えて相談すれば、応じてもらえることもあります。

例文:
「退職日についてご相談です。規程の勤続年数の区切りが◯月◯日となるため、その翌日付での退職とさせていただくことは可能でしょうか。引き継ぎは前倒しで進めます」

転職先に制度を尋ねるとき

オファー面談の場で聞いておくと、他社との比較が正確になります。

例文:
「退職金制度についてお伺いします。制度はございますでしょうか。ある場合は算定の考え方と支給の要件を、ない場合はその分が月々の給与に含まれる設計かどうかを教えてください」

制度がない会社にいる場合、自分で積み立てるという選択肢もあります。独立して個人事業主になる人向けには、廃業や退職に備えて積み立てる小規模企業共済という公的な制度が用意されています。会社員のうちは対象になりませんが、独立を視野に入れているなら知っておく価値があります。

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退職金の有無まで含めて総額で比べるには、他社の条件が並んでいる場が要ります。制度と月給の組み合わせは企業ごとに違うので、実例を見るのが早道です。

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制度がない会社をどう見るか

転職先に退職金制度がないと分かると、条件が悪いように感じます。ただし、そう単純ではありません。

退職金は、将来支払う分を今の給与から差し引いて積んでいるとも言えます。制度がない企業は、その分を月々の給与や賞与に上乗せしている設計であることが少なくありません。

だから比べるなら、在籍しそうな年数を通した総額で見る必要があります。月給が高く退職金がない会社と、月給が抑えめで退職金がある会社。何年勤めるかによって、有利不利が入れ替わります。

もうひとつの視点が、受け取れる確度です。退職金は長く勤めることを条件にしている場合が多く、途中で辞めれば満額にはなりません。一社に長くいる前提が崩れるほど、退職金の価値は割り引かれます

逆に言えば、制度がない企業を選ぶなら、その分を自分で積む前提が要ります。会社が用意しないなら、自分の側で仕組みを持つという話になります。

確定拠出年金の持ち運び

企業型の確定拠出年金を導入している会社を辞める場合、資産の移換という手続きが発生します。ここは見落とされがちな部分です。

転職先にも企業型の制度があればそちらへ、なければ個人型へ移すという流れになるのが一般的です。いずれの場合も、本人が手続きをしないと進みません。

放置すると自動的に移換される仕組みがあるとされますが、その状態では運用ができず、手数料だけが引かれ続けることになります。何もしないことが最も損な選択になる領域です。

手続きには期限が定められているとされるため、退職時の書類一式を受け取ったら、真っ先に確認してください。何を、いつまでに、どこへ出すのか。分からなければ会社の担当部署に聞けば教えてもらえます。

なお、受け取り方によって税の扱いが変わる仕組みもあります。金額が大きくなりやすい部分なので、具体的な判断は税務の専門家に確認するのが安全です。

規程はどこで読めるのか

退職金の扱いを知りたいと思っても、どこを見ればよいのか分からないという声をよく聞きます。

多くの企業では、就業規則とは別に退職金規程を設けています。就業規則の本体に「退職金については別に定める」と書かれていれば、その別規程が実体です。

就業規則は、労働者がいつでも見られる状態にしておくことが求められているとされます。社内のポータルに置かれているか、総務で閲覧できるのが通常です。見当たらなければ、担当部署に尋ねて構いません。

読むときは、支給の要件、算定の方法、事由による差、支払いの時期の四点に絞ると迷いません。全部を理解する必要はなく、自分の場合にいくら、いつ支払われるかが分かれば足ります

読んでも判断がつかない箇所は、人事に確認して構いません。制度について尋ねることは、辞める意思の表明とは別の行為です。気になるようであれば、退職を考えていない時期に聞いておくほうが自然に進みます。

💡 退職金について押さえておく点

  • 法律で義務づけられた制度ではない。制度がない企業も珍しくない。
  • ただし規程で定めている場合は、その定めに従う義務が生じると解される。
  • 支給には勤続年数の下限があることが多い。退職日を決める前に規程を読む。
  • 事由によって係数が変わる。ただし規程の区分とハローワークの離職理由は別の手続き。
  • 金額や税の具体的な見通しは、会社の担当部署か税務の専門家に確認する。

似た言葉との違い

  • 退職手当 — ほぼ同義。公務員や規程上の名称として使われることが多い語です。
  • 企業年金 — 退職後に年金の形で受け取る仕組み。一時金で支払う退職金とは受け取り方が異なります。
  • 解雇予告手当 — 予告なく解雇する場合に支払われるもの。退職金とは根拠も性格も別です。
  • 割増退職金 — 希望退職などで通常の退職金に上乗せされる分。制度本体とは区別されます。

参考にした公的情報

この記事は、次の公的機関が公表している資料をもとに制度の枠組みを整理しています。制度の内容や金額は改正されることがあるため、実際に判断が必要な場面では、リンク先の最新の情報か、担当の窓口で確認してください。

まとめ

退職金は法律で義務づけられた制度ではありません。支払うかどうか、いくらかは各企業が決めており、制度を設けていない企業も珍しくありません。

ただし就業規則や退職金規程で定めている場合は、その定めに従う義務が生じると解されています。だから確認すべきは世間の相場ではなく、自社の規程です。

算定の方式には基本給連動型、ポイント制、外部積立型といった形があります。多くの規程には勤続年数の下限があり、退職日の設計次第で結果が変わることがあります。

転職を考えるなら、自社の支給要件と区切りの時期、確定拠出年金の移換の要否、そして転職先の制度の有無を確認してください。制度がない代わりに月給が高い設計もあるため、総額で比べる必要があります。

📋 この記事の要点

  • 退職金は法律上の義務ではない。制度がない企業も珍しくない
  • 規程で定めている場合は、その定めに従う義務が生じると解される
  • 算定は基本給連動型・ポイント制・外部積立型などがある
  • 支給要件に勤続年数の下限があることが多い。退職日の設計に影響する
  • 転職先は制度の有無を確認。ない代わりに月給が高い設計もあるので総額で比べる

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