「虎視眈々」の意味
「虎視眈々(こしたんたん)」とは、虎が獲物を狙うように、機会を狙って、油断なく、じっと様子をうかがっていることを表す四字熟語です。表面上は、静かに構えていても、その内には、鋭い狙いを秘めて、好機が訪れる、その一瞬を、ねらい続けている——。そんな、油断のない、身構えた様子を言い表しています。「虎視眈々と機会をうかがう」「首位の座を、虎視眈々と狙う」のように使われる、緊張感のある言葉です。
四字を分けると、その情景が浮かびます。「虎視(こし)」とは、虎(とら)が、獲物を、鋭く見据えること。「眈々(たんたん)」とは、虎が、じっと、見下ろすようにして、ねらうさまを表す言葉です。つまり、猛獣の虎が、獲物に飛びかかる機会を、鋭い目で、じっとねらっている——。その、張りつめた姿が、この四字の、中心にあります。静かでありながら、いつでも動ける、鋭い狙いを秘めた構え。それが「虎視眈々」です。
この言葉の特徴は、「ただ待つ」のではなく、鋭く狙いながら、機を待つ点にあります。のんびりと、好機を待っているのでは、ありません。虎が、筋肉を、しなやかに張りつめ、いつでも飛びかかれる姿勢で、ねらっているように、万全の備えをして、機をうかがう。その、緊張感と、積極性が、この言葉には、こもっています。だからこそ、ときに、「隙あらば奪おうと狙う」という、やや不穏な響きで、使われることもあります。
ビジネスの場面では、好機や、市場、目標の座などを、油断なく、ねらっている様子を、表すのに使われます。競合が、こちらのシェアを、虎視眈々とねらっている。新規参入の機会を、虎視眈々とうかがう——。こうした、緊張感のある競争の場面に、よくなじみます。また、自らの、準備を整えて、好機を待つ、前向きな構えを表すのにも、使える言葉です。
🐅 虎が獲物を見据えるように、機をうかがう
ただ待つのではなく、油断なく、鋭く様子をうかがい続ける
虎視(こし)
虎が、鋭く見据える
眈々(たんたん)
じっと、見下ろすさま
機を狙う
好機を、油断なく待つ
静かに見えて、内には鋭い狙いがある。動かないのではなく、動くべき時を待っている。
「虎視眈々」の語源・由来
出典は、中国に伝わる、最も古い経典の一つ、『易経(えききょう)』です。『易経』は、古くから占いのもとになった書物であり、同時に、深い人生哲学を説いた古典として、重んじられてきました。その中の、「頤(い)」という卦(か)の一節に、「虎視眈々、其の欲逐逐(ちくちく)たり」という言葉が、見られます。
“虎視眈々、其の欲逐逐たり”
— 『易経』頤卦
この一節は、虎が、獲物を、じっと見据え、その欲するところが、次々と、あとを絶たない、という様子を表しています。「頤(い)」の卦は、もともと、「養う」ことを、テーマにした卦だと、いわれます。上に立つ者が、下の者を、どのように養い、育てるべきか——。その心構えを説く中で、この、虎の、鋭いまなざしの、たとえが、用いられたのです。
もともとの文脈では、この「虎視眈々」は、必ずしも、悪い意味ばかりでは、ありませんでした。威厳をもって、鋭く物事を見据える、堂々とした姿という、含みも、あったとされます。上に立つ者が、虎のような、鋭い眼力で、全体を見渡し、慎重に、ことを進める——。そんな、威厳ある態度を、表す面も、あったのです。
それが、時を経るうちに、「虎が獲物をねらう」という、イメージの強さから、好機や、獲物を、油断なくねらう様子を表す言葉として、広く使われるように、なっていきました。鋭い目で、じっと機をうかがう——。その、張りつめた姿が、競争や、駆け引きの場面に、ぴたりと重なったのでしょう。古代の経典に記された、一頭の虎のまなざしが、二千年以上を経た今も、私たちの言葉の中で、鋭く、光り続けているのです。
面白いのは、この言葉が、占いの書である『易経』から生まれた、ということです。『易経』は、変化の兆しを、いかに読み取るかを説いた書物でした。虎が、獲物の動きを、じっとうかがうように、物事の、わずかな変化の兆しを、鋭く見据える——。そこには、力まかせに動くのではなく、機の熟すのを見極めてから動く、という、東洋の知恵が流れています。虎視眈々とは、いわば、「時を読む力」と「待つ力」を、あわせ持った構えなのです。力だけでも、焦りだけでも、獲物は、とらえられません。
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好機・機会を狙う場面での使い方
準備を整えて、好機の到来を、油断なくうかがう場面で使えます。ただ待つのではなく、狙いを定めて、身構えている、という積極性を、表せるのが利点です。前向きな野心を、示すのにも向いています。
例文:
「海外進出の好機を、虎視眈々とうかがっています。準備は整えてあり、条件がそろえば、すぐにでも動ける態勢です。」
競合・脅威を語る場面での使い方
ライバルが、こちらの隙を、鋭くねらっている状況を、表す場面になじみます。競争の、緊張感を、的確に伝えられます。
例文:
「競合は、我々のシェアを、虎視眈々とねらっています。首位に安住せず、常に、次の一手を打ち続けなければなりません。」
目標・注意喚起での使い方
逆転や、上の座を、あきらめずにねらう姿勢を語る場面でも効果的です。
例文:
「今は二番手ですが、首位の座を、虎視眈々と狙っています。力を蓄え、機が熟すのを、じっと待っているところです。」
「虎視眈々」を、実らせる構え
虎視眈々の姿勢は、一見、ただ、じっとしているだけのように、見えます。けれど、その本質は、動かないことではなく、動くべき時のために、万全の備えをして待つことにあります。虎が、獲物に飛びかかれるのは、ねらっている間に、力を、ためているからです。ただ待つだけでは、好機が来ても、つかめません。
💡 虎視眈々を成果に変える3つの構え
- ✔狙いを定める:何をねらうのか、その的をはっきりさせておく。的が定まってこそ、機を見抜ける
- ✔力を蓄えておく:機が来たとき、すぐ飛びかかれるよう、日ごろから実力と準備を整える
- ✔焦って飛び出さない:機が熟すまでは、動かない。早すぎる仕掛けは、かえって好機を逃す
とくに難しいのが、「焦って飛び出さない」ことです。狙いを定め、力を蓄えていると、早く仕掛けたくて、うずうずしてくるものです。けれど、虎は、獲物が、十分に近づき、確実にしとめられる、その一瞬まで、じっと動きません。好機を狙う我慢強さと、機が来た瞬間の思い切りの、両方がそろってこそ、虎視眈々は、実を結びます。早すぎれば、獲物に、逃げられる。遅すぎれば、機を、逸する。その、見極めの鋭さこそが、虎視眈々を、ただの待ちぼうけに終わらせない、鍵になるのです。
ビジネスの世界でも、この虎視眈々の構えは、しばしば、勝敗を分けます。伸びる企業ほど、ただ、目の前の仕事に追われているだけでは、ありません。次に来る変化や、空いた市場を、鋭くうかがい、機が来たときに、すばやく動けるよう、ひそかに準備を整えています。表からは、静かに見えても、内には、鋭い狙いを秘めている——。それが、したたかに生き残る者の、共通した姿です。日々の業務に追われるだけでなく、ときには、虎のように、一歩引いて全体を見渡し、狙うべき機をうかがってみる。その視点が、思わぬ好機を、呼び込んでくれるかもしれません。
誤用に注意・使い方のポイント
気をつけたいのは、この言葉が「鋭く狙いながら、機をうかがう」ことを表す点です。ただ、ぼんやりと、待っているだけの状態には、使いません。あくまで、明確な狙いを持って、油断なく、鋭くうかがっている場合に、しぼって使うのが、本来の形です。緊張感のない「待ち」とは、区別したい言葉です。
読み方は「こしたんたん」。「眈々」を「たんたん」と読み、よく似た「淡々(たんたん)」と、書き間違えないよう注意が必要です。「淡々」は、あっさりと、こだわりのないさまで、意味は、まったく異なります。また、この言葉は、「隙をねらう」という、やや不穏な響きを持つこともあるため、相手に対して使うと、警戒心を、あおることがあります。自らの、前向きな構えを表すか、状況を客観的に述べる文脈で使うと、角が立ちにくいでしょう。
類語・対義語
類語
- 鵜の目鷹の目(うのめたかのめ) — 鵜や鷹が獲物を探すように、熱心に、鋭く探し求めるさま。鋭くうかがう点で通じる。
- 手ぐすねを引く(てぐすねをひく) — 十分に準備を整えて、機会を待ち構えること。備えて待つ点で響き合う。
- 機を見るに敏(きをみるにびん) — 好機の到来を、すばやく見抜いて、すかさず行動に移すこと。機をとらえて動く点で、虎視眈々と近い。
対義語
- 油断(ゆだん) — 気をゆるめて、注意を怠ること。鋭く狙い、備える虎視眈々とは正反対。
- 漫然(まんぜん) — 目的も緊張感もなく、ぼんやりと過ごすさま。狙いを定めた虎視眈々と対になる。
まとめ
📋 この記事の要点
- 意味: 虎が獲物を狙うように、機会を狙って、油断なくじっと様子をうかがっていること
- 語源: 『易経』頤卦の「虎視眈々、其の欲逐逐たり」。虎が獲物を見据える様子に由来
- 使い方: 好機・市場を狙う、競合の脅威、逆転を狙う姿勢などに
- 注意: 鋭く狙う場合に使う。「淡々」と書き間違えない
「虎視眈々」は、『易経』頤卦の「虎視眈々、其の欲逐逐たり」に由来し、虎が獲物を鋭く見据えるように、機会を狙って、油断なく様子をうかがっていることを表す四字熟語です。静かに見えて、その内には、鋭い狙いが秘められています。ただじっとしているのではなく、動くべき最良の時のために、力を蓄えて待ち構えている——その、静と動を併せ持った構えこそが、この言葉の本当の姿です。
大切なのは、ただ待つのではなく、狙いを定め、力を蓄え、機が熟す一瞬を見極めること。好機を狙う我慢強さと、機が来たときの思い切りの、両方がそろってこそ実を結びます。めったにない好機を説く「千載一遇」や、困ったときの好機を表す「渡りに船」とあわせて読むと、好機をつかむ構えが深まります。
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