「破竹の勢い」の意味
破竹の勢い(はちくのいきおい)とは、竹を割るようにとどまることなく進む、猛烈な勢いのことを意味する故事成語です。勢いに乗って次々と成果を上げ、誰にも止められない状態を表します。
「破竹」は竹を割ること。竹に刃を入れると、最初の一節を割った後は力を加えなくても次々と裂けていきます。この物理的な性質を、軍事作戦や事業の勢いにたとえた表現です。
「破竹の勢いで成長する」「破竹の勢いで勝ち進む」「破竹の快進撃」という形で、急成長や連勝、圧倒的な進撃を描写する場面で使われています。
「破竹の勢い」の語源・由来
この言葉の出典は、中国の正史『晋書(しんじょ)』杜預伝です。三国時代の終わりに起きた晋(しん)の呉(ご)征伐の場面が記されています。
西暦280年、晋の武帝(司馬炎)は中国統一の最後の障壁である呉の国を攻める決断をしました。総司令官に任じられたのが杜預(とよ)です。杜預は文武両道の名将として知られ、『春秋左氏伝』の注釈書を著すほどの教養人でありながら、戦場でも卓越した指揮能力を発揮しました。
晋の大軍は呉の国境を越えると、連戦連勝を重ねました。呉の守備軍は次々と降伏し、城は戦わずして開門しました。しかし快進撃が続く中で、一部の将軍たちが進軍の一時停止を進言します。「これ以上進めば補給線が延びすぎる。夏場に向けて疫病の危険もある。一旦兵を引いて秋に再開すべきだ」という慎重論でした。
これに対し、杜預は断固として反対しました。「今の我が軍の勢いは、まさに竹を割るようなものだ。最初の数節を割れば、あとは刃を当てるだけで竹は自然に裂けていく。これほどの勢いを止めてはならない」。これが「破竹の勢い」の原典となった発言です。
杜預の判断は的中しました。進軍を続けた晋の軍勢は、わずか数ヶ月で呉の首都・建業(現在の南京)を陥落させます。呉の最後の皇帝・孫皓は降伏し、三国時代に幕を下ろす中国統一が実現しました。もし杜預が慎重論に従って兵を引いていれば、呉は態勢を立て直し、統一は大幅に遅れていたでしょう。
杜預が見抜いたのは、戦場における「勢い」の本質でした。兵士の士気、相手の恐怖心、味方の期待感。これらが臨界点を超えると、少ない力で大きな成果が得られる状態になります。竹の最初の一節を割る力は大きいが、二節目以降はほとんど力がいらない。杜預はこの比喩で、戦場の力学を見事に言い当てたのです。
以来、「破竹の勢い」は軍事に限らず、事業や競技など勢いに乗って連続的に成功を収める様を描写する定番の表現として、二千年近く使い続けられています。
ビジネスでの使い方と例文
事業の急成長を表現する場面
自社や競合の急激な業績拡大を描写する際に使います。ポジティブな文脈で使われることがほとんどです。
例文:
「昨年末にリリースした新サービスは、破竹の勢いで契約数を伸ばしています。三ヶ月で当初の年間目標を達成し、今期の売上予測を上方修正しました。」
チームの快進撃を鼓舞する場面
プロジェクトやキャンペーンの勢いを維持し、メンバーの士気をさらに高めたいときに使います。
例文:
「先月の受注件数は過去最高を記録しました。まさに破竹の勢いです。この勢いを止めずに、今月も全力で取り組みましょう。杜預が言ったように、勢いに乗っているときこそ一気に攻めるべきです。」
競合分析・市場報告の場面
競合他社の動向や市場の変化を報告する際に、その勢いの強さを端的に伝える文脈で使えます。
例文:
「競合のA社がアジア市場で破竹の勢いを見せています。半年で五カ国に進出し、各国でシェアトップ3に入りました。当社も早急に対抗策を検討する必要があります。」
間違いやすいポイント・誤用に注意
「破竹の勢い」はポジティブな文脈で使う表現であり、破壊的なニュアンスはありません。竹を「破る」という字面から暴力的な印象を持つ人もいますが、この言葉の本質は「止まらない前進の勢い」です。成長や成功を描写する場面で使うのが正しい用法です。
「破竹の勢い」と表現する以上、連続的な成功が前提です。一度だけの大きな成功を「破竹の勢い」とは言いません。少なくとも複数の成果が立て続けに出ている状況で使うのが自然です。
また、自社の成長を「破竹の勢いです」と自ら言うのは、やや自画自賛に聞こえることがあります。社内での士気向上には効果的ですが、社外向けの発言では謙虚さとのバランスに注意しましょう。
類語・言い換え表現
- 快進撃(かいしんげき) — 勢いよく次々と勝ち進むこと。破竹の勢いとほぼ同義で、ニュースなどでも頻繁に使われる。
- 怒涛の勢い(どとうのいきおい) — 大波が押し寄せるような激しい勢い。破竹の勢いと同様に止められない前進を表す。
- 飛ぶ鳥を落とす勢い — 権勢や人気が非常に盛んなこと。個人や組織の勢いを表す慣用表現。
対義語・反対の意味の言葉
- 竜頭蛇尾(りゅうとうだび) — 始めは勢いが良いが尻すぼみになること。破竹の勢いで始まったものが失速する状況を表す。
- 停滞(ていたい) — 物事が進まず止まっている状態。破竹の勢いの正反対。
まとめ
「破竹の勢い」は、晋の名将・杜預が呉の征伐中に「竹を割るように勢いを止めてはならない」と進言した故事に由来する言葉です。
止まることなく連続的に成功を収める猛烈な勢いを意味し、一度きりの成功ではなく連勝・連続成長の文脈で使います。
事業の急成長、チームの快進撃、競合の動向分析など、勢いの強さを端的に表現したいビジネスシーンで効果的に活用できる故事成語です。
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