「二兎を追う者は一兎をも得ず」の意味
二兎を追う者は一兎をも得ず(にとをおうものはいっとをもえず)とは、二つのことを同時に追いかけると、結局どちらも手に入らないという意味のことわざです。
「二兎」は二羽のうさぎ、「一兎」は一羽のうさぎ。猟師が二羽のうさぎを同時に追いかけると、どちらにも集中できず、結局一羽も捕まえられないという比喩です。欲張って複数の目標を追うよりも、一つに絞って集中する方が確実だという教訓が込められています。
現代では「二兎を追うな」「二兎を追う者は一兎をも得ずと言うように」という形で、選択と集中の重要性を説く場面で広く使われています。
「二兎を追う者は一兎をも得ず」の語源・由来
このことわざは、西洋に古くから伝わる格言が日本語に取り入れられたものです。ラテン語では「Duos qui sequitur lepores neutrum capit」、英語では「If you run after two hares, you will catch neither」として知られています。
その起源は古代ローマの時代にまでさかのぼるとされています。古代ローマの格言集や寓話の中に、猟犬が二匹の兎を追って両方を取り逃がすという教訓話が見られます。兎は足が速く、一匹に集中してもなかなか捕まりません。まして二匹を同時に追えば、注意が分散して一匹も仕留められないのは当然のことです。
このたとえ話は、中世ヨーロッパを通じて各国の言語に広まりました。フランス語、ドイツ語、イタリア語にもほぼ同じ意味のことわざが存在し、それだけこの教訓が普遍的な真理として受け入れられてきたことがわかります。
日本には明治時代以降に伝わったとされています。西洋文化の流入とともに翻訳され、日本語のことわざとして定着しました。日本語には元々「虻蜂取らず」という同じ意味の表現がありましたが、「二兎を追う者は一兎をも得ず」の方がイメージしやすく、現在ではこちらが広く使われるようになっています。
経営学でも「選択と集中」の原則を説く際にこのことわざがしばしば引用されます。限られた経営資源をどこに集中させるかという判断は、古代の猟師の教訓と本質的には同じ問いを投げかけています。
ビジネスでの使い方と例文
会議・プレゼンでの使い方
事業やプロジェクトの優先順位を議論する場面で、リソースを分散させるリスクを指摘する際に使えます。
例文:
「国内市場と海外市場を同時に攻めたい気持ちはわかりますが、二兎を追う者は一兎をも得ずです。まずは国内の基盤を固めてから、来期に海外展開を検討しませんか。」
メール・ビジネス文書での使い方
提案書や戦略レポートの中で、絞り込みの理由を説明する際に使えます。
例文:
「今期のマーケティング施策は、SNS広告に集中投下する方針といたします。二兎を追う者は一兎をも得ずの教訓から、チャネルを絞って効果を最大化する戦略です。」
1on1・部下指導での使い方
複数のタスクを抱えて優先順位をつけられない部下に、集中の大切さを伝える場面で効果的です。
例文:
「今抱えている案件が5つあるけど、全部を同時に進めるのは無理がある。二兎を追う者は一兎をも得ずだから、まず最も締切が近い2つに絞って仕上げよう。」
間違いやすいポイント・誤用に注意
このことわざは「複数の目標を持つこと自体」を否定しているわけではありません。否定しているのは、限られたリソースで複数の目標を同時に追いかけ、どちらにも十分な力を注げない状態です。時間や人員に余裕があれば、複数の目標を段階的に達成する計画は合理的です。
また、この教訓が常に正しいとは限りません。ビジネスでは一石二鳥を狙って両方の成果を得ることが可能な場面もあります。このことわざを盾にして挑戦を避けるのは、教訓の趣旨とは異なります。大切なのは、今の自分のリソースで本当に両立可能かを見極める判断力です。
読み方では「二兎」を「にと」と読みます。「にう」や「にうさぎ」は誤りです。「一兎」は「いっと」です。
類語・言い換え表現
- 虻蜂取らず(あぶはちとらず) — 二つのものを同時に取ろうとして、どちらも取れないこと。日本古来のことわざで、ほぼ同じ意味。
- 選択と集中(せんたくとしゅうちゅう) — 重要な分野にリソースを絞って投入すること。経営戦略の基本原則としてビジネスで頻繁に使われる。
- 一点集中(いってんしゅうちゅう) — 力を一つのポイントに集中させること。「二兎を追うな」の肯定的な言い換え。
対義語・反対の意味の言葉
- 一石二鳥(いっせきにちょう) — 一つの行動で二つの成果を得ること。二兎を追って両方を得た場合に使う表現。
- 一挙両得(いっきょりょうとく) — 一つの行動で二つの利益を同時に手に入れること。一石二鳥と同義。
まとめ
「二兎を追う者は一兎をも得ず」は、古代ローマの格言に端を発し西洋各国に広まったことわざで、二つのことを同時に追えばどちらも失うという教訓を説いています。
否定しているのは「両立不可能な状況での同時追求」であり、複数の目標を持つこと自体ではありません。リソースに見合った判断が核心にあります。
ビジネスでは、事業戦略の優先順位づけやプロジェクトのリソース配分を議論する場面で、選択と集中の重要性を訴える際に使うのが効果的です。
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